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05.17  
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銀魂 土妙

 土方が隊服のポケットに手を入れるのとほぼ同時に、妙は眉根を寄せて大げさな溜息をついた。
あからさまな非難だ。けれど土方はそれをものともせずにポケットから煙草を一本を取り出した。なんら躊躇うことなくその先端に火を点し、咥える。
「煙草なんて、どこがいいのかしら。理解しがたいわね」
 土方の喫煙の阻止は諦めたのか、妙の口調は注意というより呆れの色のほうが濃く出ていた。不満そうな妙に対して土方は酷く満足そうに唇を歪めた。左手で煙草をはさみ、煙を吐き出す。妙はその煙に露骨に顔を顰めたが、土方はそれしきのことで動くような男ではない。煙草の火を消す様子は欠片も見せなかった。
「税金は取られるし、依存性もあるし。ましてや体にはただの毒なのに。百害あっても一利あるとは中々思えないわ」
 指を折って煙草の短所を挙げて見せて、妙が言外にもう一度非難した。すると土方は、少し低い位置にある妙の目を覗き込むようにして、意地の悪い笑みを浮かべた。そして、はじめて妙に言葉を返す。
「そりゃ、煙草吸わねェ奴にはこいつの一利なんざ分かんねーだろうさ」
 指の間にはさんでいた煙草の先を妙の方に向け、吸うかと尋ねた。が、妙は微笑みみながら煙草を持つ手を押し戻した。煙たいっつってんだよ、という彼女の心の内が土方には手にとるように理解できた。
「役人の癖に未成年に勧めてどうするんですか。それに私にはその煙草の良さとやらを知るつもりは毛頭有りませんから」
「そうかよ」
 くっ、と喉を鳴らして笑うと土方はもう一度煙草を咥え、煙を吸った。数秒してから吐き出して、短くなってきたその先端を灰皿に押し付けた。
 
「こいつァ溜息を隠すためのモンだ。煙を吐いてると、そうとは分からなねェだろ?」
 自信満々に言い放つ土方を、妙は簡単に鼻で笑うことで一蹴した。“鬼の副長”と恐れられる彼をここまでぞんざいに扱える人間は限られるだろう。貴方って馬鹿だわ。彼女がクス、と笑いながら投げかけた言葉はあまりにも酷いものだった。

「ア゛?」
「もっと上手な隠し方がありますよ」
「言ったな? どーすんだよ?」
 意識して作られた妙の挑発的な笑みに案の定乗せられてしまった土方は、年甲斐も無く食って掛かった。
予想通りの反応に妙はほくそ笑むと、土方と目線を真っ直ぐ合わせ口を開いた。

「こうするんですよ」
 妙はふぅ、と悩ましげな溜息を吐いて見せた。何だよ隠せてねェだろそりゃ。そう言って笑おうとした土方は、次の瞬間に凍りついた。

 妙が溜息を吐きながらも土方との距離を詰め、その唇に自分のものを重ねたのだった。
 あまりに唐突な、予測もしていなかった出来事に土方は目を見開いた。その表情を見て満足したのか、妙は嬉しそうに顔を引いた。そして再び、溜息を吐く。

「間にキスを挟めば、鬱屈からの溜息だって「幸せすぎて溜息が出ちゃうv」とかほざく馬鹿な女の溜息に聞こえるでしょう?」

 使える場面と使えねー場面とあるだろうが、だとか土方の頭にはたくさんの反論が浮かんできたが、どれも一つとして口に出すことができなかった。それくらいにただ驚いて、“女”の顔をした彼女が恐ろしくて。

「伊達に仕事はしてないってか……? ったく」
 そうやって悪態づくのが彼には精一杯だった。


*****
土方×妙が好きです。はいマイナー!
この話妙×土方っぽいけど気にしない(…
もっとお妙さんがいぢめられる話を考えてたけど、まあそれはまたいつか。
 
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