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05.18  
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「行きたいんでしょう?」
 マルスは笑って羊皮紙を差し出した。マケドニアのミネルバ王女宛ての文書だった。カインは目を大きく見開いてから、それを隠すように頬を掻いた。そんなことで君主の目は誤魔化されてやらない。行きたい、という言葉に動揺したことくらいお見通しだ。彼がそのことを肯定するかしないかはさておいて。
「……マケドニアへはどんなに速く私の馬が駆けようとも、往復で三日を要します。しかし、明後日には新兵の卒業演習を監督するようアラン殿から申しつけられています」
 そのことはマルスも承知していた。半期ごとに募集されるアリティア軍の新兵が、最後の訓練として課せられる演習。先の戦いで民衆の希望となったマルスの人望は厚く、今期はそのマルスの為に、と例年をはるかに超える数の志願者が集まっていた。長年宮廷騎士団長を務めていたジェイガンが退いた後、カインは後任のアランを支えながら、教官として後進の育成に励んでいた。その集大成に当たる卒業演習は、彼にとって外すことのできない任務であった。
 しかし、臣下の仕事一つ把握していないマルスではない。概ね想定していた通りのカインの返答にしたり顔をして、有無を言わせずその手に文書を握らせた。
「それに関しては、もう手を打ってあるよ」
「は…?」
「ドーガと、あと一人。強力な助っ人を代わりに僕から頼んである。渋られたんだけど、奥さんの後押しもあって承諾してくれたよ」
 奥さん、という言葉をやや強調して伝えた。彼に話すのはそれだけでよかった。
「まさか、アベルが?」
「うん。……早く会ってこいって、皆笑ってたよ」
 特にエストに計画を話した時は、大喜びしていた。アリティアへ越してきて新婚生活を満喫しながらも、いつも彼女の頭の片隅にはマケドニアにいる姉たちの姿があったという。手紙のやり取りは頻繁にあったが、アベルと始めたばかりの店の切り盛りは忙しく、実際に様子を見に行くことはできずにいた。だから、カインが「彼女」に会いたそうにしているから、マケドニアに行かせる計画を手伝ってくれないか、というマルスの頼みに、エストは飛び跳ねて喜んでいた。
 お膳立てはした。だからあとは、彼の意志一つだ。
「……ありがとうございます」
 そして彼は、そこでなおためらうような男ではなかった。
「ミネルバ王女に、マリア王女に、パオラに……カチュアによろしくね」
 彼は文書を押し頂き、マルスの御前から退った。


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たぶん前後なにか考えてたんだけどもう思い出せない
高校の頃書いたカイカチュさんリサイクル

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